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インドネシア産希少魚種の生殖幹細胞バンクの構築:貴重な遺伝子資源の永久保存を目指して(事前調査)

概要

インドネシアは、地球上の動植物種の約20パーセントが生息する生物多様性の非常に豊かな国であり、その生物多様性指数はアマゾンを有するブラジルに次いで世界第二位を誇っている。水圏に目を向けると5000種以上の魚種が報告されており、淡水魚の種数は約1300種に至っている。この数はブラジル、中国についで世界で第三位の種数である。また、このうち142種が固有種として記載されている。

特にウォーレシア島嶼群に属するスラウェシ島には、マリリ湖群とよばれる古代湖があり、多くの固有種を育んでいる。特にメダカ属魚類はこの水域で急速な種分化を遂げており、全30種のうち20種がこの水域に分布している。

このような豊かな生物相を有するインドネシアであるが、森林伐採や海外資本による巨大ダムの建設が急速に進んでおり、一部のエリアでは水圏環境も悪化の一途をたどっている。上述の淡水魚、特に固有種の生物量の増減は殆ど報告がなされていないため明らかではないが、環境悪化の影響が危惧される現状にある。

一方、海域に目を向けるとインドネシアシーラカンス(Latimeria menadoensis)がスラウェシ島周辺海域に生息している。本種は白亜紀末期に絶滅したものと信じられていたが、20世紀になってコモロ諸島でLatimeria chalumnaeの生体が発見されたのに続いて、1997年にはLatimeria menadoensisの現生も確認された。これら両種は四肢動物の祖先と考えられており、“生きる化石”と呼ばれている。最近の研究において、Latimeria chalumnaeの寿命は100年程度と長寿であり、妊娠期間は5年、春機発動には55年を要することが報告されている。また、魚類としては極端に産仔数が少なく3-30と報告されている。Latimeria menadoensisの生活史はほとんど明らかにされていないが、これらの事実はシーラカンスの2種は環境変動に対してとりわけ脆弱である可能性を示唆している。

このようにインドネシアには、淡水域、海水域ともに貴重な魚類の遺伝資源が存在するが、それらの長期保存体制は現在までに構築されていない。代表者らは世界に先駆けて魚類の卵巣や精巣内に存在する生殖幹細胞を液体窒素内で凍結保存すること、さらにはこれらの凍結生殖幹細胞を代理の親となる宿主個体に移植することで、凍結細胞から卵や精子を生産する技術をサケマス類で構築することに成功した。この技術を応用することで、今までに絶滅危惧種であるミヤコタナゴやムサシトミヨの卵や精子に加え、野生絶滅種であるクニマスの卵や精子、ひいてはその次世代個体を安定生産することに成功している。この方法では、継代を経ずに長期間にわたり(理論的には永久に)細胞を保存することが可能なうえ、これらの細胞を用いていつでも個体を再生可能であるため、継代に伴う集団の遺伝子組成の変質を避けることができる。このような点を考慮すると本方法は絶滅危惧種の遺伝子資源の長期保存法の決定打になりうる。

そこで、このプロジェクトでは、インドネシアの希少魚類の生殖幹細胞の凍結保存(生殖幹細胞バンクの構築)、さらには本技法を現地研究者に普及させるための体制構築を目指し、その予備調査をすすめることとする。

 

 

実施体制(2025年5月現在の予定)

主研究者と組織

吉崎悟朗教授(東京海洋大学)

共同研究者

日本 天野祐一(東京海洋大学)
竹内裕教授(金沢大学)
堀内雄太(金沢大学)
インドネシア Kawilarang Warouw Alex Masengi教授(サムラトランギ大学)
Ixchel Feibie Mandagi(サムラトランギ大学)
Alimuddin教授(ボゴール農科大学)
インドネシア国立研究革新庁(事前調査で協力を求める予定)

 

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